長谷川集平さんの絵本は、どれもわたし好みです。以前紹介した「大きな大きな船」もよかったですけど、ここ2ヶ月で読んだ、長谷川さんの絵本を3冊紹介しましょう。どれも、絵本ですから、子どもが読んでも楽しめます。主に高学年向けですが、おとなが読んでも、しっかりと読み応えのある絵本ばかりです。
「ホームランを打ったことのない君に」

最初のページ、野球の得点の仕組みがわからなくて、ちょっと躓いたのだけど、気にしないで読みすすめる。
ある野球少年が、試合でみんなの期待に応えられずに、がっかりしている。その日の試合は、ぼこぼこだった。
夕方、母親にお使いを頼まれて町に出ると、偶然、近所に住む、アニキ的存在の人が現れた。公園で、二人は一緒に夢を語り合う。

後で母親に知らされるのだが、実はこの男性、交通事故に遭い、選手生命も危ういのだった。それでもリハビリを続けているというのだ。
自分の苦境をちらっとも見せずに、少年とともに夢を語り合うことのできた、男性の信念に胸が熱くなる。少年は、夢を語り合えたことで、どれだけ励ましになっただろう。
夢を語り合えるなんて、すばらしい。
夢を語る相手がいる人は、どうか大事にしてください。語る相手がいない人のためには、祈ります。いつかすばらしい出会いがあるように。いずれ出会うであろう、未知の相手にふさわしい自分であるために、自己研鑽を、楽しめるように。
「あしたは月よう日」

阪神淡路大震災の起こる前、あたりまえに繰り広げられる日常。
後書きを読むまで、背景を知らされないわれわれは、そうとは知らずに読むのです。そして、最後までそのことが絵本の中では明かされない。おならをしたり、テレビに感動したり、家族が交わすありふれた会話。なのに、しんみりと透き通るようなものが、絵本の底の方に流れている。

なにも起きない、普段通りの日常がどれだけありがたいか、そういうことを無言で語りかける絵本です。
「パイルドライバー」

好きな子がいるんだけど、その女の子を前にすると、かちんこちんになってしまう。相手もきっと自分に気があると、察しているのだけど、言い出せない。
ある時、女の子がプロレス技を繰り出し、主人公の男の子はノックダウンされるが、その時に女の子が言うひと言が最高だ。
こんな告白、聞いたことない。でもいいな、すごくストレートで、いいと思った。なんて言ったかは教えない。自分でこの絵本を探して読んでね。
プロレス技にかけられて、完全にのびて床に転がったままの男の子は、さらに強く確信する。ぼくは彼女が好きだ。
好きな男の子に、ラブレターを渡すとか、告白するとか、そんなことがいきなり陳腐に思えてしまうほどのインパクト。まさか同じことをする子はいないだろうけど、素敵だと思いましたよ。