種を蒔く人



究極のシンプルな衣服生活、それは着物だと思うのだけど・・・・

着物なんて・・・・・
母にもらった着物があるんですよ。
一着50万もするようなお召し物、しかも自分で着ることができないし、
シミなんてつけた日にゃ、どうしますか?
染み抜きに何気なく出してごらんなさい、
5000円なんてあっという間だから。
しかもね、帯なんて着物よりも高価で、
何が悲しくてそんなものに大枚はたかなければならないのだろう。
美しいとは思うけれども、袖を通すのは、
心から着物を愛する人であるべきだ。
価値の分からないわたしなど・・・・・そんなもん、
要りませんと、丁寧にお断りしたのだ。
なのに、嫁入り道具は人並みに持たせたいという強情な母と祖母に諭され、
なかば喧嘩になり、
結局わたしの投げやりな妥協で決着した。

そんな着物、長男の入学式で今日、ようやく日の目をみましたよ。
「一度くらい袖を通さないとね」
そんな理由で着たわけですが・・・・・・。

朝もはよから、
「もうどうにでもしてくれぃ、煮るなり焼くなり、紐を巻いてボンレスハムにするなり、お好きなようにどうぞ」
みたいな気分で、パジャマを脱いでかかしのように両手を広げる。

それにしてもね、感心したのはね、
人間の立体的な体に、平面的な裁断から成る直線の布を、
昔の人はとても器用に、よく着たものだなぁ、ということ。
今はね、上手に着付けるための装置がさまざまできており、
袖の下から背中を通ってまたがる摩訶不思議な小物もあるんだ。
それなのに、紐を何本使っただろうね、
そこまでしなくてはならない着物っていうのは、
いかに非合理的なお召し物かということを、身を以て体験したよ。
そんなに紐を巻いたら、文字通りチャーシューになっちゃいそう・・・・・・。

洋服というのは、立体的に裁断して、体に沿うように縫製するから、
着る側の技術なんて必要ありませんからね。
それぞれの体に会うように縫製すれば、
誰でも着られる。
着物はそうは問屋が卸さない。
着付け技術をもつ美容院に頼めば、関東のホテルでなら1万円かかるからね。
この辺でも5000円かかりますよ。
考えてもみてください、着せてもらうのに、技術料をお支払いする。
しかも安くない金額です。どう思います?
5000円もあったら、絵本が何冊買えるかしらねぇ。
しかも、着物を着ると、髪もそれなりに整えないとみっともないんでございますのよ。
必然的に、美容院代もかかるわけだ。

母が着付けてくれたのだけど、
我慢強いからね、わたし。
途中で着崩れたら困るし、そういうもんだと思えばこそ、
苦しいのを我慢したわけさ。
半分くらい着付けたときに母が聞きました、
「くるしぐねが?」
「大丈夫、深呼吸でぎねけど、いぎでぎる」
「あっはっは。ばがだのぉ。深呼吸でぎねばだめでんだぁ~」と言うが早いか、
しゅるしゅると一度巻いた紐をほどき、
途中からやり直し。
母がいうには、苦しければいいってもんじゃなくて、
上手に着付けると、圧迫感がなくても着崩れしないのだらしい。
ふ~ん。
それにしても、服を着るのに一時間というのは、どうなんだろう、
すごく疲れるし、時間がもったいないという気がする。

着慣れないものを着たせいで、
入学式の最中、深呼吸を何度も試みるも、
だんだん苦しくなってきて、
早く終わることだけを念じていました。
パイレーツオブカリビアンだったかな、あの映画でかわいらしい女性が、
きつく締めたコルセットのせいで、
酸欠を起こし海に落ちてしまうシーンがありましたね。
それを助けたのは主人公、ジャックスパローでしたが、
その手際の良さったら、そりゃーもう、ほれぼれするほどでした。
わたしが酸欠で倒れた場合、
複雑きわまりない着物をどうやってほどくのだろう、
ほどけなかったら事だよなぁ、なんて考えましたよ。
歩くにも、いつもの半分しか進まないからまどろっこしいことこの上ない。
とにかく、家に帰ってきて普段の洋服に着替え、
ようやくトイレも行けるし、
ご飯も食べられるという心持ちがしました。

もちろん、着物を畳む術も知らないから、
脱いだものの後片付けもぜんぶ母任せ。
いやぁ申し訳ないことです。

見せるためだけの、機能性の全くない着物。
これじゃ、着物業界は大変だよね。
高い芸術性を備え、歴史が育んだ貴重な文化ではありますが、
あまりに高価なのと、着付けの難しさなどから、
専門知識がなければうっかり手を出せない分野でありますね。
若い女性も、その美しさに感嘆はしても、
実際に、式典で気軽に着ましょうなんて人は少数派でしょう。
だからといって、ひと頃出回った「ニューキモノ」という、
上下が分かれていてウエスト部分を帯で隠すというものは、
本来の着物とは別物ですよね。
今もあるんでしょうかね、あれ。

せいぜいオーダーメイドスーツが一着つくれるくらいのお値段で、
一式そろえられるような普段使いの着物が普及するといいのにね。
絹でなくて、綿でね、洗濯もできたらもっといいわね。
そういう着物だったら、わたしはきっと着ると思うよ。

だって、昔の人の普段着だったんだもの。
それが今の私たちに着られないなんてことはないでしょう。
直線の布の縫い合わせで仕立てる服、
体に会わなくなったらほどいて仕立て直し、
その体にもあわなくなったら、ほどいて雑巾に、おしめに。
布の貴重が時代だから、知恵を絞ってぼろぼろになるまで使い倒した。
わたしが小さい頃に遣っていた布団は、
祖母が嫁入りの時に着た美しい深紅の絹をあしらったものだった。
「ばばちゃんのきもの」
子ども心にその布団を使わせてもらうのが嬉しかったものだ。
着物というのは本来、究極のシンプルな衣服ではないですか?

既製服が安くなって、いくらでも洋服が買える時代にあってもなお、
わたしは、シンプルな昔の人の身仕舞いにはあこがれるね。
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by aikannsya | 2010-04-09 21:59 | シンプルスマイルな生活を目指す
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4人の子どもたちと殿と暮らすクリスチャンです。庄内平野のはじっこから、日々の生活をレポートします。
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