ときどき車で通る道路沿いに、こぶしの木がある。
大きくて真っ白い花弁を、緑の葉が出る前に一気に咲かせる。
枯れ木に綿細工をしたような風情が好きだ。
真っ白いものと、まれに、赤紫色の花弁のものがあるけれど、
なにせ鮮やかな白い花にはかなわない。
車だと通り過ぎるのがあっという間なので、
急いで目に焼き付けようと思う。
写真に収めても、この美しさは表現できないだろうと思うのだ。
歌にするという手もあるか? いやいや、よした方がいい。
形にしようとした瞬間に、切り取った風景は新鮮味がなくなる気がする。
この頃、毎日のように長女を乗せて運転するのだけど、
手持ち無沙汰だから、何気ない季節の変化も話題になる。
昨日は菜の花が咲いていると言うから、
すかさず口ずさんでみた。
「なのは~なばたけぇに、いり~ひうすれ~」
歌詞はうろ覚えだけど、
二人で「つぎなんだっけ?」みたいな話をしながら、
歌ってみた。
一度歌うと、油断した瞬間に勝手に思い浮かんで、
頭の中をリフレインするから嫌なんだよね。
アニメソングも、さびの部分だけ30回も40回もリフレインされると、
いい加減怒鳴りたくなるでしょ、
「歌うな!」
子どもたちには悪いけど、やはり限度というものがあろう。
どんなに美しい歌でも、だ。迷惑なんだよ。
自分の脳みそがそれを勝手にやるのだからね、
腹立たしいのに、いらいらのぶつけ場所がないという。
そういうことってない?
菜の花畑。
こういう、中途半端に淋しげなメロディーは好きじゃないのだけど、
老若男女、たくさんの人と共有できるメロディーだということで、
なくてはならない歌なのでしょう。
長女と一緒に歌うことができる曲というのは数少ない。
第一冬の間、わたしの意志に反して定期的に流れていたメロディ、
「ゆきはふる~、あなたはこない~」
よりかはず~っといいと思う。
雪が降る度、脳みそを支配してきたこのフレーズが、
菜の花に変わるなら大歓迎だ。
こぶしの花も菜の花も、春の花ではある。
しかし、こぶしの花は美しさに心を打たれるのだけど、
菜の花は、正直、一面の菜の花畑だったりしても、
「食べたらうまそう」と思ってしまう。
可憐な菜の花。
昨日も見かけた菜の花畑に、
三女は「わぁ~おかあさん見て、黄色だよ~」
なんて声を上げるのだけどね、わたしは、
こんなにあるならちょっと失敬して、
食べても怒られないかな、なんて事を考えていた。
ほんともうしわけない。
まさか盗みには行かないけれども、
菜の花は、食うとうまいんだよ。
春の味覚というイメージの方が強くて、すまんって感じだ。
意外な着地点におどろいたみなさんを置き去りにして、
さ~て、始動開始っと。
今日も忙しいぞ。