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種を蒔く人



グルーミング・トークで正しく傷を嘗めあうという、ね、そういうことだよ。傷じゃなくてもいいけどさ。

犬は挨拶代わりに匂いを嗅ぐし、
コウモリやイルカは超音波でコミュニケーションをとりあっている。
人間はそういうコミュニケーションができない代わりに、
言葉を使っているのだそうだ。
日高さんがそうおっしゃってる。
動物学者である日高さんは残念ながらもうなくなっているけれども、
この方の本はわかりやすく、素人のわたしにも動物界の仕組みが楽しめるので、
定期的に著書を読んでいる。

「動人物、動物の中に人間がいる」日高敏隆著

挨拶代わり。
そういうことか。
いきなり出会いがしらに体をなめたり、
はたまた超音波で確認したりすることはできないけれども、
挨拶やそれに代わる言葉で相手とコミュニケーションをとるのが人間。
それがグルーミング・トークというのだそうです。
「大変いいお天気ですね」
「今日は遠いところ来ていただいてありがとうございます。車は混んでいましたか?」
「めっきり寒くなりましたね」
などなど、交わさなくても差し支えない挨拶代わりの言葉がそれだ。
動物学者の日高敏隆さんが言うには、二匹のネコが出会ったときと同じように、
人間は言語で互いをぺろぺろなめあっているのだそうだ。
一見無駄と思われるこれらの会話だが、
両者の社会的友好関係のためにはじつに重要な役割をはたしているのだそうだ。
なるほど。
たわいない会話で、お隣のおばあちゃんをいたわったり、
好きな人をなでたり、子どもを愛撫したりする道具として言葉を使うわけだね。

そこで思い当たることがあった。
わたしの父は、グルーミング・トークらしき言葉を一切言わない。
寡黙といえばそれまでだが、一緒に暮らす家族は大変である。
何を考えているのかわからないし、機嫌が良いか悪いかも察することができない。
雑談の一つもしてくれれば、場が和むということがあるのに、
存在感だけを強烈に据えておいて、黙して語らず、
語ってもらいたければ客人を呼んで酒を飲ますしかない。

わたしもだんだん父に似てきたと感じることがあって、
このごろ反省させられる場面が多い。
夫婦は事務連絡すればそれで済むというものではない。
どうでもいいことであっても、そこから話を膨らませ、
会話を交わすことでお互いをいたわるということもあるのだ。
それも一つのたいせつな愛情表現なのだよ。
今さらだけど、そういうことに深く気がついたのが結婚10年も経ってからだというのが、
我ながら情けない話ではある。
「言わずとも、この愛悟っておくれでないか」
そんな武士のような態度を、現代で、しかも主婦がとって通用するはずがない。

動物の世界においてのグルーミングは、生きる上で重要な役割があるそうで、
人間も豊かな人生をおくりたいと望むなら、
社会生活を豊かにするべく努力するのは大事なことに違いない。
聖書にもある、人間は神を目でみることはできないけれども、
「神の愛」は人間関係の中でこそ、その奇跡をみることができる。
豊かな社会性をもつための道具としてぜひとも、
言葉によるグルーミング・トークを上手に使いこなせるようになりたいものだ。

この著書では、グルーミング・トークに限らず、
動物学者である日高さんに説得力のある事例をもとに語られるので、
人間は動物の中に位置しているということがすんなり納得できてしまう。
当たり前だって思う?
いいえ、どこかで人間は猿より上等な存在だと思ってませんでした?
私は思ってました。
この本は至る所にそういう気づきが仕込まれています。
人間はユニークな存在だ。
だけど、動物界において特別な存在というのではない。
生きとし生けるものすべてがユニークで、優越をつけるという問題ではないから、
自然界に対して謙虚にならなければいけない。
そんなメッセージが、わかりやすく、
時にはふふっと笑える語り口で書かれていて楽しめた。

テレビ番組から仕入れた話なので、遺伝子学的な信憑性はよくわからないけど、
興味深い実験結果が紹介されていた。
人は遺伝子の配列が自分と遠い人を好きになるのだそうだ。
すんなり納得できたのはわたしだけじゃないと思う。
それは生物として近親相姦を避けるためにうまくできた仕組みで、
たぶん理性を越えた深みの問題だと思う。
ところで、わたしは猿が嫌い。
それはね、遺伝子が猿に近いからだと思う。
わたしは人間の中では進化に遅れた旧タイプで、
従って遺伝子の近い猿には自動的に嫌悪感を持ってしまうと考えられる。
だって、犬とは相性が最悪で、小さい頃からしょっちゅう噛まれているけれども、
不思議と嫌悪感というのはもっていない。
なのに猿には、噛みつかれたこともなでたことも、
道ばたで出くわしたこともないのに嫌いなんだよ。
ネコなんて、何度引っかかれたかわからないのに、だ~いすきだし。
これはだから、理由なんてないのさ。
生理的な問題、つまり、遺伝子なんだと思うね。
わたしは類人猿遺伝子をどこかに隠し持っているに違いないわ。
by aikannsya | 2010-10-24 22:34 | こんな本を読んでます
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4人の子どもたちと殿と暮らすクリスチャンです。庄内平野のはじっこから、日々の生活をレポートします。

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