「クシュラの奇跡」
染色体の異常で複雑な障害をもって生まれたクシュラ。
クシュラは障害の自覚がないままに、体の不調を泣き続けることで訴える。
うまく呼吸ができなくて熟睡できないために、
昼も夜も四六時中だっこしていなければならないという状況で、両輪がしたことといえば、
来る日も来る日も、クシュラを抱きしめ、絵本を読んであげることだった。
医者には絶望的な見通しをかたられていた。
医学的な見地からしたらそれは正しいことなのだろうけど、
両親にとってはどれだけ酷だったか。
だけど母親は「精神遅滞」という医者の見立てにびくともしなかった。
そしてクシュラは奇跡的な成長をしていく、その事細かな記録だ。
同じような医者の見立てにどれほどの母親が心くじかれたか、
著者はそのことをとても心配している。
医者が一度レッテルを貼ってしまうと、素人である両親もそのまわりも、
その通りに受け入れるしかないではないか。
「レッテルを貼る必要性について問いただしたい気持に駆られる」と語っている。
手のかかるクシュラをなだめる手段として手放せなかった絵本が、
図らずも(当時は絵本の効果についての認識が今ほどなかったらしい)両親の愛を伝える手助けをし、クシュラの情緒の発達に素晴らしい影響を与えたのだ。
医者の見立てをはるかに超えたクシュラの成長が喜ばしいです。
ドキュメンタリー映画を見るような感じがしました。
絵本の詠み語りを始めた頃からこの本は読んでおくべきだと思って、
図書館にもあるけれども、手元に置いておきたかったので買う機会を待っていた。
絵本の底力を改めて認識することができて感謝です。
クシュラに読み語った絵本は当然洋書ばかりなのですが、
140冊の絵本のうち、多くが翻訳されていているという事実に注目したい。
底力のある絵本は国籍を超えて受け入れられる。