うちはオットが好きな新聞をとっているけれども、
実は別の新聞社のを読みたいわたしは、周回遅れで実家から新聞をもらって読んでいる。
もらった新聞に目を通していると、
ときどき新聞を鍋敷きにしたらしい丸い染みを見つけておかしくなる。
こたつの上で鍋を囲むときに、そのへんにある新聞を鍋敷きに使っているのだ。
それでふと思い出した。
関東に住んでいた頃、一緒に外回りをしていた上司にウナギ丼をご馳走してもらったことがある。
きちんとした座敷に上がっていただくお店でした。
正式なうなぎ丼なるものを食べたのは、それが初めてだった。
アパートから通う普通の会社員だったので、
ランチにウナギなんていう発想がなかった。
だいいち、うなぎがなぜあんなに高いのか解せないのだった。
長いにょろにょろしたものを、平べったくして甘く味つけしてご飯の上に乗せる。
うなぎは蛇ともちがうけど、魚っぽくもない。
どうも不思議な感じがする。
実家では「やつめうなぎ」というものを冬になると父がどこからかもらってくる。
「うなぎ」じゃなくて「やつめうなぎ」だと言っていた。
するとばあちゃんがそいつをぶつ切りにして七輪で焼いてから煮込んで食べさせてくれた。
七輪に乗せられたうなぎの、4センチくらいに切られたしっぽが、
あついあついといってるようにくねくね動くのを見て心底気味が悪かった。
煮込んだうなぎはうまかったけど、
七輪の上のくねくねを思い出さないように自己暗示をかけるのがたいへんだった。
冬になると出稼ぎにいくのが当たり前だった東北の百姓の村も、
ほどなく総じて豊かになり、テレビでは食べ歩きの番組が流れるようになった。
番組でタレントさんがうなぎを食べていても、
実家のだれも「くいっでの」と言わなかった。
だって、うなぎだもん。
なんていうか、高級な食材じゃないんだよね。イメージが。
うなぎがおいしいというその店は確かに繁盛していたが、
値段を見てさらにびっくりした。
どんなにかすごい味かと思ったら、どってことなかった。
関東の食文化は、こういうものが高級なのかと、やはり解せない思いを残すのだった。